チック、トゥレット症候群の原因はドーパミン系の神経伝達がうまくいかないことが予測されています。

また、多くの場合、10歳代後半になると症状が軽減もしくは消失していくため、脳(主に大脳基底核)の発達により症状が抑えられていくことが予測されています。

ですので、治療というのはあくまで目の前の症状を抑えるという対症療法であり、根本的な治療にはならないことをまず抑えておく必要があります。

またとくにトゥレット症候群の場合、いくつかの併存症を伴うことがありそれを抑える目的で治療が行われることがあります。

その上で、藁にもすがる思いで数々の書籍やネットを駆使してどのような治療法があるのかについて徹底的にまとめてみました。

チック、トゥレット症候群の治療法まとめ

チック、トゥレット症候群の治療には、さまざまな種類があります。

  • 薬物療法
  • 心理療法
  • 行動療法
  • 鍼灸治療
  • 栄養療法
  • 神経外科療法

それぞれ見ていきましょう。

薬物療法

最も知られている治療法であり、ドパミン受容体阻害薬であるハロペリドールをはじめとしたさまざまな薬物が治療に用いられています。

一過性のチックや単純のチックに用いられることは少ないですが、慢性的なチックやトゥレット症候群の一部には薬物治療が用いられます。

症状の程度やどの程度日常生活で困っているかなどを考慮し、主治医の先生と相談しながら、開始されます。

薬物治療についてはこちらにまとめました。→【徹底まとめ】チック症・トゥレット症候群の薬物治療!

心理療法

本人が症状について悩んでいるときや、家族の不安が強い時に有効とされており、薬物療法と併用することも可能です。

心理療法は、直接チックの症状を抑える治療ではなく、

  • チック、トゥレット症候群について正しく理解する。
  • 症状が出ることで生じる問題への不安や緊張感を取り除く。

ことが行われます。

この心理療法は、

  • 支持的心理療法
  • 遊戯療法
  • 箱庭療法
  • その他

に分けることができますが、厚生労働省1)によるとそのほとんどは支持的心理療法が行われているようです。

支持的心理療法とは?

支持的心理療法とは、治療者である医師(小児科、精神科、小児神経科)が本人や家族のチック、トゥレット症候群で困っていることに話を傾け、それを理解して受け入れることから始まります。

その上で、そのような悩みが何によるものかを解析して、それを説明します。

その上で、本人や家族が、自ら積極的に悩み・問題を解決する案を出せるように支えていくものです。

これって普通の診察と何が違うのでしょうか?

実は通常の診療の中で、困っていることや悩みを医師に打ち明けて、医師から説明を受けることも支持的心理療法に含まれるのです。

なんだそんなことかあ?と思われる治療かもしれません。

しかし、通常、なかなか同じ症状で悩んでいる家族などは周りにはいませんし、理解さえしてもらえないことが多いと思います。

病気をよく知る医師に悩みを打ち明けて、現状でできる解決策を探していくことで本人や家族の気持ちは前向きになれそうですね。

行動療法

チック、トゥレット症候群の症状は、自分の意図とは関係がなく出てしまうものですが、「その行動をしないではいられない」という衝動性を伴って出ることがあります。

そのような場合には、本人にその行動を意識させて、あえて別の動作をするように訓練することで症状を減らそうというのが行動療法(の一つ)であり、中でもこの方法は「ハビットリバーサル」と呼ばれています。

ただし、意識すると逆に症状が増悪してしまうこともあり、衝動性を伴わない無意識で行われる症状には向かないとされています2)

鍼灸治療

いわゆる鍼(はり)治療です。

日本の数々の書籍を専門書を含めて読みましたが、この鍼灸治療について触れられているものはほとんどありませんでした。

あったとしても、鍼治療が行われることがあるがエビデンス(それで症状が改善する証拠)に乏しい。という記載があるくらいです。

日本トゥレット協会のHPに記載のあるトゥレット症候群が診察できる医療機関の2つの異なる病院の医師に鍼灸治療について尋ねてみましたが、いずれも「エビデンスがない」ということで前向きではありませんでした。

世界的に有名なMAYOクリニック(メイヨークリニック)のサイトにも鍼治療については触れられていません。

そこでさらに、インターネットを使って調べてみました。

するといくつかの論文を見つけることができました。

Clinical observation on acupuncture for treatment of Tourette’s syndrome

まずはこちらClinical observation on acupuncture for treatment of Tourette’s syndromeという題名の論文です。

2006年に発表されています。

この論文によると、鍼治療をおこなった群と、ハロペリドール内服をおこなった群でその効果を検証したところ前者の方が症状の軽減した割合が多かった3)というものです。

カナダにあり東洋医学をしているNFA clinic

このクリニックによると

鍼治療により期待される効果と治療頻度
  • チックの頻度や強さが通常は減ることが予測される。
  • 全体的に3ヶ月の鍼治療により、チックの頻度や強度は平均して30%軽減を認めてきた。
  • 患者の状況や進行度により異なるが、推奨される鍼治療の頻度は3ヶ月間週2回。
  • その後、週に1回か2週間に1回。

とのことです4)

Acupuncture for Tourette Syndrome: A Systematic Review

こちらは2016年の割と新しい論文です。

チックの症状を軽減するという点において、鍼治療は西洋医学よりも短い間で効果的であり、西洋医学の効果を改善する効果的な補助療法となると推測される。(しかし、その証拠(evidence(エビデンス))には限界がある)5)

とのことです。エビデンスは十分とは現状言えないが、効果はありそうだということがわかります。

鍼治療は、証拠に乏しいのは事実ですが、一定の効果は見込めることがわかりますね。

栄養療法

チックの治療法でネット検索していると、栄養セラピーも記載があります。

「栄養療法なんて効果あるの?」

と思っていましたが、藁にもすがる思いで、いくつかの書籍を購入して調べてみました。

チックの改善のためには、

  • ナイアシン
  • ビタミンB群

の摂取が大事なようです。

ナイアシンのサプリメントをチック症状のある子どもに飲ませたところ、早い子供では4日目で効果があり、他にも1週間から1ヶ月で明らかな改善がみられたという報告もあるようです6)

サプリメントではなく食事から摂取する場合、

  • ナイアシンを含む食材→豚・牛レバー、たらこ、マグロ、さば、落花生、玄米
  • ビタミンB群→牛・豚・鶏レバー、うなぎ、鰹、マグロ、秋刀魚

が挙げられます。

マグロ、さば、うなぎ・・・この辺りだとうちの子供も始められそうです。

神経外科療法

上記のいかなる治療も効果的でない場合に、基本的には最終手段として考慮される治療法です。

深部脳刺激療法(DBS: Deep Brain Stimulation)と呼ばれるもので、脳の大脳基底核と呼ばれる部位に手術で電極を埋め込み、微弱な電流を流して刺激する方法7)です。

もともとは、パーキンソン病やてんかんなどの病気に用いられていた治療法ですが、難治性のチック・トゥレット症候群にも有効なことがわかってきたようです。

最後に

チック・トゥレット症候群の治療法についてまとめました。

デキモノの治療のように取りきれば完治できるという病気ではありませんので、対症療法が治療になります。

また少しでも何か有効な治療に関する情報があれば追記していきますね。

一緒に知識をつけましょう。

そこから光が見えてくることを信じて・・・。

治療以前に大事なことを教えてもらいました。こちらも是非読んでください。→野村芳子小児神経学クリニックを受診!一番大事なチックの治療とは?

参考文献:
1)厚生労働省 障害保健福祉総合研究事業 平成20年度
2)チックとトゥレット症候群がよくわかる本P96
3)Zhongguo Zhen Jiu. 2006 Jun;26(6):392-4.
4)NFAクリニック

5)Acupuncture for Tourette Syndrome: A Systematic Review
6)医師も実践している子供が丈夫になる食事  P140-141
7)重度難治性チックに有効な脳深部刺激療法(DBS)とは