チック症やトゥレット症候群の原因は正確にはわかっていません。
しかし、ドーパミンの働きを抑える薬が効果的であることがわかっています。
一番有名なのは、ドーパミン受容体阻害薬(ハロペリドール)です。
この結果から、チックにドーパミン神経系が何らかの関与をしていることが推測されます。
つまり、あくまで原因が解明されたわけではなく、
- ドーパミンを抑える薬が効いた→ドーパミンが関与しているのだろう。
という流れです。
結果ありきなのですね。
しかし、結果ありきであっても、原因を推測する手がかりになります。
そこで今回は、チックの場合に、ドーパミン神経系がどのような状態になっていることが予測されるのか、また最も有名な薬であるハロペリドールはこのドーパミン神経系にどのように作用しているのかについてまとめました。
チック・トゥレット症候群とドーパミンの関係の説明動画
動画を作成しましたのでこの動画を見ていただいた後、記事を見られますと理解が深まると思います。
正常のドーパミン神経系
正常の場合、上の図のように、ドーパミンはドーパミン神経の神経終末から分泌されて、次の神経の働きを調節する役割があります。
神経終末から分泌されたドーパミンは、次の神経のドーパミン受容体で取り込まれることで次の神経に作用するのです。
このパターンだけでなく、神経終末から分泌されたドーパミンは、一つ前の神経終末のドーパミントランスポーターから再度取り込まれることで、調節もしています。
「ちょっとドーパミン出しすぎたから、やっぱ戻ってきて」
こんな感じで再取り込みが行われているということです。
チックで予測されるドーパミン神経系
一方で、チック症やトゥレット症候群の場合、上で述べたように効果的であった薬から以下の状態が予測されます。
これが、チック症状が起こる原因(の1つ)と予測されます。
では、なぜ過剰なドーパミンが次の神経に取り込まれるようなことが起こるのでしょうか?
これには、
- そもそもドーパミンが過剰に分泌されている。
- 次の神経のドーパミン受容体の数が増加している。
- 再取り込みをするドーパミントランスポーターの機能が低下している。
という3つの機序が考えられます。
ドーパミン受容体阻害薬(ハロペリドール)はどのように作用しているのか?
では、チックの治療薬として最も有名なドーパミン受容体阻害薬(ハロペリドール)はこのドーパミン神経系にどのように作用しているのでしょうか?
次の神経の受容体で取り込まれるのをブロックするのです。
これにより、ドーパミン神経系を抑制することができます。
これによりチック症状が軽減することが知られているのです。
ただし、ドーパミン受容体阻害薬であるハロペリドールには短期的な副作用や、ドーパミンは大脳の発達にも関与しているため、脳の発達に影響があるとも言われており注意が必要です。(この点については、こちらにまとめました。→【徹底まとめ】チック症・トゥレット症候群の薬物治療!)
最後に
チック症とドーパミン神経系の関係について図を用いてまとめました。
チックの発症に、最も関与が予測されているのが、このドーパミン神経系です。
しかし、それだけでないのがこの病気のややこしいところでもあります。
他にも、薬が効果的であったという結果などから
- セロトニン系
- ノルアドレナリン系
- ヒスタミン系
などの関与が示唆されています。
ドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリン系をまとめてアミン系神経と呼び、主にアミン系神経の発達が関与しているのではないかと言われています。
はじめまして。大変興味深く読ませていただきました。
私の息子もチック症状があります。
たくさんの情報を入れすぎてややパニック状態になりました(^^;
チックは、ドーパミンが多いからという見解と、瀬川先生が解明した?といわれるドーパミンを出しすぎて、足りなくなってしまったといわれるものがあります。
たとえば薬物療法を行ったときは、真逆になりますよね?ドーパミンを止めるもの、増やすもので…。
いったいどちらが正しいと思われますか?
戦い隊様
コメントありがとうございます。
おっしゃるように
①ドーパミンが過剰になっている→「ドーパミン受容体を遮断する」ことでドーパミンの取り込みを抑える
②ドーパミンが足りない→ドーパミン受容体の数が反応性に増えている→「ドーパミンを補充する」ことで反応性に増えているドーパミン受容体の数を減らし、ドーパミンの取り込みを抑える
という2種類の治療が行われており、これまで教科書的にも前者が一般的でした。
ただし①は副作用の懸念があります。(②に副作用が全くないという意味ではありません)
残念ながらこの病気は原因が解明されていない病気であり、どちらが正しいのかはわかりません。
専門家の間でも学会などで、「ドーパミンに関する説明が逆だ。」などと議論になることもあるようです。
現在息子は、先日から瀬川先生のところで②の治療を行っています。
ある程度の効果を感じてはいるものの波があるのが現状です。
早速のご返信ありがとうございました!
つくづく早く解明してほしいなと心から思いました…。
調べてしまった者は①の療法か②の療法どちらを行っている方に行けばよいのか迷ってしまうなと…
いろいろな方のブログなんかを拝見してますと、お医者さんよりも保護者のかたや当事者が研究したらもっと早く解明できるのでは?なんてことも思いました。
①については、できる施設が非常に限られていますね。
https://overcome-tourette.com/wp-content/uploads/2017/10/tic1-1.png
こちらの画像にもあるように、年齢によっても機序が異なるとも考えられているようで、そうなると年少例においては①が有効なのではないかという予測もできます。
個人差もかなりあると思いますが。
>いろいろな方のブログなんかを拝見してますと、お医者さんよりも保護者のかたや当事者が研究したらもっと早く解明できるのでは?なんてことも思いました。
早く解明されて欲しいですし、世の中の理解ももっと進めばいいのにと思います。
難病指定にも未だにされていないですし、国がまず理解してくれない状態なので、研究も進まないのかもしれませんね。