チックの症状にはどのようなものがあるのしょうか。
目をパチパチするのは有名ですが、目をパチパチしていた子供が、ある日新しいクセのような動きをし始めた。
そのときに、
「え?これもチックの症状なの?」
と不安に思われる方もおられるでしょう。
そこで今回はチックの症状について、一覧にして徹底的にまとめました。
チックの症状を大きく分類
チックの症状は大きく
- 運動チック
- 音声チック
の2つに分けられますが、さらにそれぞれ単純チックと複雑チックに分けることができます。
- 単純チックとは、明らかに目的がない素早いチック
- 複雑チックとは、ややゆっくりで一見目的があるように見えるチック
です。
複雑チックは、目的があるように見えるため、どうしても「わざとやっている」とか「反抗している」とか「ふざけている」と思われることがありますが、決してそんなことはありません。
運動チックの症状
- 単純運動チック
- 複雑運動チック
に分けて見てみましょう。
単純運動チックの症状
まず運動チックには好発部位があり、顔面や上半身に多く、下肢には少ないという傾向があります。
明らかに目的がない素早い運動チックには以下のようなものがあります。
- まばたき(目をパチパチさせる)
- 横目を向く
- 白目を向く
- 目を回す
- 口をゆがめる
- 鼻をヒクヒクさせる
- 鼻すすりをする
- 肩をすくめる
- 首を急速に振る・グイッとひく
最も多いのが、まばたきであり、症状が続く場合は、ご両親が心配して眼科を受診させることがあります。
多くは一過性であり、軽いものを含めると10人の子供のうち1-2人に発症するため、まばたきくらいならば周りのお子様がしているのを見たことがあるかもしれません。
複雑運動チックの症状
一方で、ややゆっくりで一見目的があるように見える複雑運動チックには以下のようなものがあります。
- 顔の表情を変える
- 飛び跳ねる
- スキップをする
- 屈伸をする
- 人や物に触る
- 舐める
- 蹴る
- 自分を叩く
- ものを叩く
- 物の匂いをクンクン嗅ぐ
一見目的があるように見えるというのは、「もしかしてわざとやっている」のではないかと見えてしまいますが、決してわざとではありません。
音声チックの症状
こちらも
- 単純運動チック
- 複雑運動チック
に分けて見てみましょう。
単純音声チックの症状
明らかに目的がない素早い音声チックには以下のようなものがあります。
- 咳をする(咳払い)
- ブタのようにブーブーとうなる
- 「あっあっ」と声が出る
- 「フンフン」と声が出る
- 「ウォー」と吠えるような声が出る
- ハミング
複雑音声チックの症状
一方で、ややゆっくりで一見目的があるように見える複雑音声チックには以下のようなものがあります。
- きたない言葉(性器など卑猥とされる言葉、汚言症=コプロラリア)を発する
- 他人の言った言葉をそのまま繰り返す(反響言語=エコラリアという)
- 自分の発した音声や単語を繰り返す(反復言語、同語反復=パリラリアという)
注意する点としては、子供はきたない言葉が大好きですので、ふざけて言ってるのかチックの症状として言っているのかわかりにくいことがしばしばあります。
ふざけて言っている場合は当然症状(汚言症)には含まれません。
これらの言葉は、会話の文脈に関係なく唐突に出るのが特徴です。
これらのチックの症状は、やめるように指摘しないことが重要とされています。
やめるように注意しても増悪することはあっても改善することはないためです。
チックの症状は1日の中でも変わる?
- 適度な緊張があり、精神的に安定しているときに症状は安定
- 緊張が強い場合や、緊張が全くないときに症状は増悪
する傾向にあります。
つまり、幼稚園や小学校のような適度な緊張があるところでは、症状は安定していますが、帰宅してから緊張感がなくなった状態では症状は強く出ることがあります。
また新学期の始まりや、発表会など緊張が強い場合に、症状が強くなることがあります。
チックの症状がひどい!(強い!)と感じられたときは、本人に過度な緊張がかかっていないかを確認してあげてください。
詳しくはこちらにまとめました。→チックの症状が悪化するのはどんなとき?
チックの症状は経過で変わることがある?増えることがある?
新学期や発表会・運動会など季節の変わり目・イベント時に「緊張感の変化」により症状が変わることがあるのは上に述べた通りです。
チックの症状の経時的な変化として、
「幼少期に単純チックが出現。
→その後症状が消えない場合は、年齢が上がるに連れてチックの種類は増加して、複雑性チックを合併するようになる」
という報告があります。
正直、チックを持つ子供の親としては受け入れがたい報告です。
私もこのことを書籍で初めて読んだときには、絶望を覚えました。
今でも受け入れられません。
しかし、その来るかもしれない未来に向けて目を背けずに見てみます。
その報告がこちらThe Epidemiology of Tourette’s Syndromeです。
その中でこのようなグラフがあります。
症状別の平均年齢の一覧なのですが、これだとちょっとわかりにくいので、これをわかりやすくしたのが次になります。
文献1)2)を引用改変
これからわかることは以下の通りです。
- すなわち年齢が高くなるほどさまざまな症状が出てくること
- 12歳前後から運動チックに加えて音声チックや強迫行動を伴うこと
がわかります。
ただしあくまでこれは傾向であり、個人差もありますので、これがそのままそうなるわけではありません。
一過性のチックではなく、1年以上の経過で運動チック及び音声チックを有するトゥレット症候群の場合、約1/3は思春期以後に症状は劇的に減少しますが、1/3は症状が残ると言われています3)。
もともと生涯続く進行性の病気であると認識されていたようですが、今ではそうではなくて思春期以後は軽減する傾向にあることが知られています。
思春期以後も症状が残りやすいのは、併発症を有している場合と言われています3)。
病院を受診するべきチックの症状は?
教科書的には
- 症状が強くて(運動チックで)食事も摂れない場合、味噌汁をこぼしてしまう場合
- 周囲とトラブルを起こしている場合
- 症状を指摘されて本人や家族が悩んでいる場合
などに受診すればよいなどと記載があります。
個人的には、「そこまで待てないでしょ」という感じですが。
受診するべき科は?
もちろん専門の先生に診てもらっても「様子を見ましょう」と言われるのでしょうけど、重みが違いますよね。
受診するべき科でベストは
- 小児神経科
- 小児精神科
を標榜している病院(先生)となります。
とくに症状が強い場合は、日本トゥレット協会が「トゥレット症候群が診察できる医療機関一覧」として挙げている病院を受診されるのがいいと思います。
次に、
- 小児科
- 精神科
となります。
知り合いの精神科の先生に聞いてみたら「大人専門なので子供はちょっとわからない」と言われました。
子供も診られるのかを確認してから受診した方がよいでしょう。
目をパチパチとまばたきをするから眼科などに行っても、「チックですね。」と言われて、上のような専門科の受診を勧められるだけですので注意しましょう。
ただし、チック以外でもまばたきをすることがありますので、チックと確信した後で上のような専門科を受診するようにしましょう。
最後に
チックの症状について、運動チック、音声チックに分けてその経過までをまとめました。
「え?これもチックの症状なの?」
と最初はびっくりする方もおられると思います(私もそうでしたので)。
また、経過として、お子様が小さい場合は、今後症状が増えてくるかもしれないというのは当事者(私もです)としては、本当に恐怖です。
しかし、その場合でも慌てずに少しでも「そういうものなんだ」と思えるようにこの記事が参考になれば幸いです。
この辛さは当事者(本人とその家族)しかわかりませんよね。
一緒に乗り越えましょう!負けないぞ!
参考文献
チックをする子にはわけがある1)P115, 3)P124
こころの科学No.194/7-2017 P19